SOFJOについて

日仏整形外科学会会長としての独り言

 2021年の日本整形外科学会 (以下JOAと略) 学術集会の国際シンポジウムにTradition & innovation in Japanese & French Orthopaedicsとして取り上げられました。フランスからの招待者は次期SICOT理事長に内定したPhilippe Hernigou先生と、画期的な骨折治療のマスクレ法の開発者Alain.C. Masquelet先生でした。

 また、座長は2021年フランス整形災害外科学会 (Société Française de Chirurgie Orthopédique et Traumatologique 以下SOFCOTと略) 会長のP.Tracol先生と日仏整形外科学会副会長の大橋博嗣先生の予定でした。しかし、コロナ禍の状況でオンライン開催となり、SOFCOTメンバーとの東京での再会は叶いませんでした。

 私は1985年から1988年まで3年強パリに留学し (資料1, PDF形式1.1MB) (資料2, PDF形式2.5MB)、その半分の期間をフランス政府の給費で研修できました。留学中にSOFCOT準会員になり、正会員となった1998年から毎年11月に開かれるSOFCOTには必ず参加していましたが、2020年にはコロナ禍で出席できず、忸怩たる思いでした。2021年は是非とも参加をと熱望しておりましたところ、奈良医科大学の長谷川英雄先生がToulonに留学されたのを幸いに、コロナ禍のフランスへ向かいました。会場ではSOFCOTメンバーの歓待を受け、AFJO-NARAのポスターを長谷川先生と会場に設置し、多くの方にアピールできました。

 日仏整形外科の演題はほぼ毎年JOA学術集会に取り上げられています。SOFCOTでは2010年に招待国として初めて日本の整形外科セッションを11月11日の8時から10時までの2時間にわたり組んでもらい、大盛況のうちに終了しました。2020年に逝去されたMarcel Kerboull先生も参加されていたのが印象に残ります。2022年のAFJO-NARAではKerboull先生追悼のシンポジウムが行われました。

 このように日仏整形外科の関係は深く、1987年の第60回JOA学術集会にて七川勘次 (滋賀医大)、菅野卓郎 (川崎市立井田病院)、小林晶 (福岡整形外科病院) の三先生によって発意された日仏整形外科学会 (Société Franco-Japonaise d’Orthopédie 以下SOFJOと略) は、1987年神戸市で開催された第15回日本リウマチ関節学会の後援を得て第1回が開催されました。SOFJOは2023年に20回を迎えます。SOFJOの会員数は195名となり、演題数も増加しています。詳細は機関誌『INFOS』をご覧ください。

 1990年11月12日には、パリで第1回の日仏合同会議 (Association France-Japon d’Orthopédie 以下AFJOと略) が開催されました。AFJOは2年毎に日仏両国で交互に開催され、第2回AFJOは1992年10月4日に京都で開かれ、2022年までに16回開催されています。

 日仏交換留学制度はSOFJO、AFJOの大きな交流の賜物で、日本から約80名、フランスから20名の参加があります。留学後も交友を深めており、事務局長の本間康弘先生が2010年から2012年まで外国人レジデントとして研修したパリ南大学付属Henri-Mondor病院で出会ったKISHI Takaakira先生が、初めてフランス側からSOFJO幹事に選出され、SOFJOとAFJOの連携を担ってくれています。

 最後に、JOA学会骨軟部腫瘍学術集会会長を務めた際にJournal of orthopaedic scienceに掲載された拙著、16世紀に活躍した『近代外科医の父』と称されたAmbroise Paréについて記したEditorialを紹介します (資料3, PDF形式0.5MB)。

 また、SOFCOT学会で渡仏時にはパリ市内やパリ周辺を散策することにしていて、私が訪れたパリ近郊の2つの博物館について紹介します。留学やパリ滞在の際のご参考にして頂ければと思います。

  1. Camille CLAUDEL博物館 (Gare de l’EstからNogent-sur-Seine駅まで約1時間)
    関東大震災時のフランス大使Paul Claudelの姉であるCamilleは、ロダンに弟子として仕えました。オルセー美術館やロダン美術館にも多くの作品が展示されていますが、ここは2017年にCamilleの生誕地に開設されました。

    エントランスに整形外科ゆかりのLéopold Ollier像がみられます。

  2. Louis BRAILLE 博物館 (Gare de l’EstからP線でEsbly下車、徒歩30分)
    点字開発者として著名なLouis BRAILLEの生家で、点字を実際に体験できます。東京パラリンピック女子マラソン優勝者の道下美里選手が、前回のリオパラリンピックで銀メダルを獲得した際に掲載された、臨床整形外科の視座の私の投稿「点字開発者ルイ・ブライユに学ぶ」を添付します (資料4, PDF形式0.2MB)。

 2021年10月から11月にかけて2週間ほど南仏のToulonからArles、Camargue、Parisなどを訪問しました。パリではフランス整形災害外科学会に加え、初めてフランス語圏40か国が参加して開催されたアカデミー外科学会への参加の機会がありました。マクロン大統領やイダルゴ・パリ市長の後援もあり、盛大な学会となりました。詳細は2022年の『INFOS 32号』に掲載しましたので、ご一読ください。

 まだ完全にはコロナ収束を見ませんが、日仏整形外科友好の発展を望みます。

2022年4月

日仏整形外科学会会長
(順天堂大学大学院医学研究科整形外科・運動器医学 特任教授・名誉教授
フランス整形災害外科学会 名誉会員)
金子 和夫

 

沿革

日仏整形外科学会の設立趣旨と沿革

​我が国において医学は、整形外科学も含めて明治以降のドイツ医学、第二次大戦後のアメリカ医学を主流として多くの事を学び発展してまいりました。

翻ってフランスは近代整形外科発祥の国であり、古くから大きな業績が見られ、そもそも整形外科 (Orthopédie) という言葉が誕生したのもフランスであり、アングロサクソン系のものとは異なった天才的な独創性がある事は世界的に認められております。

近年我が国の整形外科医が少なからずフランス留学を経験し、また今後の留学希望も年々多くなっております。

この間の大きな障害の原因の一つは、医系における外国語の習得が英・独語に限定されてきたことにあると考えられます。しかし、一度フランス医学を経験したものにとって、その独特の考え方は深く感銘を受けるものであります。

したがってこのようなことから、両国の交流が増大することは学問的交換のみならず、おたがいの親善にも役立つと考え、かつてフランスに留学経験を持つものが提唱して本学会の創立をみたものであります。

本会の第一回の会合は1987年11月神戸にて開催され、成功裡に終えることができました。さらに1988年11月東京において第二回を、1989年11月には大阪で第三回の会合を持ち、いずれも多数の参加者があり、フランス側の参加者にも好評を博しました。

第三回目の会合の際、かねてよりフランス側から申し出のありました日仏両国間の整形外科医の交換研修の案が進められました。この日仏の若い整形外科医の相互受け入れ研修については、渡航費はそれぞれの国で、滞在費は受入先で賄う事と取り決められ、この案にしたがって既に1990年秋にはフランスからの交換研修医を受け入れました。毎年12月から1月にかけて、次年度の日本側候補者の選考をおこなっております。

​また、この第三回の会合に於いて、フランス整形外科学会との協議会 [AFJO (Association France Japon d’Orthopédie)] の設立も決定され、その第一回の会合および学術会議が1990年11月にパリで成功裡に終りました。この会は隔年に開催される事となりました。

次回および現在までの学会開催年度と場所は以下の通りです。

日仏整形外科学会 (SOFJO)

第1回1987年11月6日神戸ポートピアホテル会長 七川 歓次 (滋賀医科大学整形外科)
第2回1988年10月29日東京日本都市センター会長 七川 歓次 (滋賀医科大学整形外科)
第3回1989年11月11日大阪ホテル・ニューオータニ大阪会長 七川 歓次 (滋賀医科大学整形外科)
第4回1991年11月9日大阪大阪コクサイホテル会長 七川 歓次 (滋賀医科大学整形外科)
第5回1993年10月30日大阪千里サイエンスセンタービル会長 七川 歓次 (滋賀医科大学整形外科)
第6回1995年5月10日大阪大阪国際交流センター会長 七川 歓次 (滋賀医科大学整形外科)
第7回1997年11月1日京都国立京都国際会館会長 七川 歓次 (滋賀医科大学整形外科)
第8回1999年10月16日大阪ホテルグランヴィア大阪会長 山野 慶樹 (大阪市立大学医学部整形外科)
第9回2000年11月25日横浜パシフィコ横浜会長 坂巻 豊教 (国立小児病院整形外科)
第10回2002年10月12日弘前アップルパレス会長 原田 征行 (青森県立中央病院)
第11回2004年11月6日神戸神戸国際会議場会長 小野村 敏信 (大阪医科大学)
第12回2006年10月14日京都京都ホテルオークラ会長 久保 俊一 (京都府立医科大学)
第13回2008年9月27日東京日本都市センターホテル会長 金子 和夫 (順天堂大学医学部附属静岡病院整形外科)
第14回2010年9月25日広島広仁会館会長 安永 裕司 (広島大学大学院医歯薬学総合研究科)
第15回2012年9月22日東京東京ドームホテル会長 飯田 哲 (松戸市立病院)
第16回2014年9月6日福岡アクロス福岡会長 塩田 悦仁 (福岡大学医学部)
第17回2016年11月25日・26日岡山・香川ラヴィール岡山・ベネッセハウス (直島)会長 藤原 憲太 (大阪医科大学)・青木 清 (旭川荘療育・医療センター)
第18回2018年7月7日滋賀・大津琵琶湖ホテル会長 今井 晋二 (滋賀医科大学)
第19回2020年12月19日・20日神戸神戸国際会議場会長 星 忠行 (小松整形外科医院)
第20回2023年7月8日横浜ホテルニューグランド会長 柁原俊久 (国家公務員共済組合連合会横浜南共済病院)

日仏整形外科学会 (SOFJO) 開催記録

 

日仏整形外科学合同会議 (AFJO)

1990年 第1回 パリ
1992年 第2回 京都
1994年 第3回 パリ
1996年 第4回 東京
1998年 第5回 リヨン
2001年 第6回 大阪
2003年 第7回 グルノーブル
2005年 第8回 京都
2007年 第9回 ニース
2009年 第10回 沖縄
2011年 第11回 ボルドー
2013年 第12回 京都
2015年 第13回 サンマロ
2017年 第14回 日光
2019年 第15回 リヨン
2022年 第16回 奈良

 

​活動内容

1) 例会および学術集会の開催
2) 仏整形外科医の招待講演の企画
3) 日・仏整形外科学の情報交換と交流
4) 会報「INFOS」の発行
5) 日仏整形外科医の交換研修
6) AFJO (Association France Japan d’Orthopédie) 日本部会としての諸活動
7) その他本会の目的を達成するために必要な事項

 

​役員

会 長金子和夫
副会長大橋弘嗣
書記長本間康弘
会計青木清
書記安藤厚生
幹 事飯田哲
今井晋二
柁原俊久
大鳥精司
岸孝章
久保俊一
田中康仁
藤原憲太
星忠行
松峯昭彦
安永裕司
名誉会員小林晶
瀬本喜啓
交換研修委員
 (統括)
水野直子
西脇徹
金城健
前田勉
交換研修委員竹本充
大槻周平
藤城高志
内藤聖人
市原理司
橋本瑛子
田邊智絵

事務局

〒520-2192
滋賀県大津市瀬田月輪町
滋賀医科大学 整形外科学講座内
Tel. 077-548-2252 Fax. 077-548-2254​