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■交換研修帰朝報告 |
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平成18年度 城戸 顕 |
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平成18年度 日仏交換研修帰朝報告 |
奈良県立医科大学 整形外科 城戸 顕 |
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1. はじめに。 |
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![]() 写真1 手術場にてアンラクト教授と |
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2. 幸運であったことに。 私にとって非常に幸運であった事は、平成16年度に本交換プログラムのフランス側からのフェローとして福岡の総合脊損センターに滞在したブリス・イラレボルド医師が若手リーダーの一人として小生の滞在した整形外科Bに勤務していた事です。渡仏まだ間もない頃、昼飯抜きで長引いた手術の後など早速飲みに誘ってくれ、旨いアントレコートをさっと御馳走してくれた流石にスマートなこのパリっ子は、メイヨ・クリニックに基礎研究の留学経験もあり日本の事情にも詳しく英語堪能頭脳明晰容姿端麗の三拍子揃い踏みで、何かと世話を焼いてくれ、小生には心強い限りでした。同じく若手リーダー格の腕白者“会計”マックアントワヌ・ルソー医師、小生が同室に机を頂き朝のコーヒーとクロワッサンを良く御馳走してくれたカメル・アジョイ医長、誰よりも早く自宅に招待してくれた松濤館空手の有段者アレクサンドル・ミレー医長、この30歳前後の活動的な4人は特に仲良く小生に接してくれ、快適な滞在生活を送る事ができました。 またアンラクト教授の計らいで、隔週ごとにコシャン病院と隣接する癌センターのキュリー研究所とで交互に行っている腫瘍学カンファレンスに参加させて頂く他、パリ南部に位置するパリ第11大学ビセトル病院のクール教授、コシャンに隣接するアラゴクリニックのミセナール医師の手術も見学できるよう段取りして頂いた事、これらもまた幸運なことでありました。
3. 宿舎のこと、そして食堂には掟。 |
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![]() 写真2 掟通りワイン抜きを使わず開栓するルソー医師 |
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4. 日課、そしてこの交換研修で何を学ぶのか。 毎朝A,B部門合同で7時45分から前日の外傷症例報告、8時からB部門の会議室に移り前日の術後報告(毎日が手術日です)、8時半から執刀開始、火、金の午後は術前カンファ、隔週月曜の合同腫瘍カンファが主とした日課です。私は手術症例はアンラクト教授、トメノ教授の腫瘍の症例、 新たにコシャンで大転子骨切りを工夫したという人工股関節置換術などに沢山入らせて頂きました。これまでに滞在された中にはこちらでまず語学学校に通われ、或は原則3ヶ月の研修期間を半年、一年と延長し研鑽を積まれた先生方もいらっしゃるとの事で、その努力と向学心には頭が下がる思いがします。ここで交換研修の選考委員の諸先生のお叱りを覚悟で書くならば、しかしながら応募年齢上限ぎりぎりの私は、この度の渡仏は、諸先輩型より志し一層ひくく、もとより僅かな期間での、しかも非英語圏での臨床留学を、細かな技術を身につけるインテンシブなトレーニングにする事や、或は細かく症例を検討して論文にするといった“成果を出す”形の滞在にするのは到底不可能であると割り切り、所謂いい年をしたポリクリとして、彼らがどう考えどう手術を進め診療をしていくのか、その空気を楽しむ事に専念しようと決意しておりました。 ただ手術だけは、助手をする以上手術器械の名称だけは素通りする訳にもいかぬと怠け者の小生もかなり奮闘しました。筋鈎、鉗子、摂子の類いです。日本で余り見かけぬ器械も結構あります。大きいの、小さいの、有鈎無鈎、自分の手袋のサイズ、いろいろ看護婦さんに云えないといけません。仏語です。この点は大分勉強いたしました。セットエデミッと叫ぶと7.5の手袋が出てきます。アンコルフォアとお願いするともう一組出してくれます。ガウンの紐の閉め具合を訊かれてもいつもセボンセボンです。術者が大きな声でアンシジョンと叫んで手術開始,相づちはボアラです。やばめの失敗は迷わずデソレと謝ります。サバ?には即サバ!昼過ぎに別れるときはボナプレミディであなたもパリ語ペラペラです。適応の是非を含め、色んな意味で一番印象に残った症例を提示します(写真3)。大腿骨骨肉腫。骨外浸潤は有りません。執刀は腫瘍外科の名手ミセナール医師(アラゴクリニック)。驚くほどの手際の良さと出血の少なさで大腿骨全置換を行い同種骨で再建、術中要所要所に秘訣を説明して下さいます。 |
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![]() 写真3 知る人ぞ知る腫瘍外科の名手ミセナール医師の神業的手術(アラゴクリニック) |
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5. フランスは、そしてパリの町は。 余り予備知識無く飛び込んだフランスは、そしてパリの町は、かつて縁あって数年間滞在していたゲルマン語圏で抱いていた印象とは随分かけ離れた、非常に人情にあふれるあたたかい土地でした(写真4)。若干年を喰って日本から押し掛けてきたこの交換フェローと親しく接してくれた全てのパリッ子の同僚たちに、そしてこの留学の機会を与えて下さいました日仏整形外科学会の小野寺敏信会長、滞在先の決定にあたりお世話頂いた同じく本学会の瀬本喜啓先生、藤原憲太先生への感謝の辞を持ってこの稿を終えさせて頂く事に致します。ありがとうございました。 |
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![]() 写真4 カメル医長、学生たちと パリ大学医学部の学生の75%は女性だそうです。 |
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交換研修帰朝報告 英文 |
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